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天国と地獄のオーボエと、アマオケあれこれ

オーケストラステージ(正面から)

昨日無事に定期演奏会が終わりました。
ああよかった~でも寂しい・・・

目次

演奏について

今回私が乗り番だったのは、天国と地獄(地獄のオルフェ)とラフマニノフ交響曲2番でした。前者はトップ、後者は2ndを吹きました。

天国と地獄(地獄のオルフェ)

天国と地獄、ソリストにとっては結構な地獄です。クラリネット、オーボエ、チェロ、バイオリンと、ほぼ独奏のドソロが続きます。

こちら1997年のN響の演奏なのですが、ぜひ2:00あたりのオーボエ吹きの安堵の顔を見てほしい・・・。
彼の気持ち、よく分かります。私も終わった瞬間ニッコニコだったそうで、今回の演奏会は終始撮影されているので、もう見るのが怖いです。笑

この曲はソリストが4名いるわけですが、トップバッターのクラリネットソロはプロの方が担当したので、緊張されてはいたものの相変わらず最高の演奏でした。さすがです。

問題はその後に続くアマチュア3人。
演奏会後の打ち上げで判明したのですが、私だけかと思いきや、3人とも非常に緊張しいでありました。楽器が鳴らない悪夢を見てはっと起きる、前日眠れなかった、緊張で手が震える・・・共感しかありません。

それでも表現することをやめない私たち。この衝動はもはや生理的なもののよう。こんなに苦しいのに続けるっておかしいけれど、表現するものはずっと持っておきたいよねとホルンの人の言葉に深く頷いてしまいます。

オーボエソロの評判

指揮者のご家族が演奏会にいらっしゃっていたらしく「オーボエソロが一番よかったって」と教えていただき、感無量でした。

また指揮者本人からも、

本番のソロって、言ってしまえばアマチュアだとこけることが多いけど、この団はむしろ本番が一番上手で、それがすごい。

これはきっと団のレベルの高さの表れなのだろうな、と思いました

とのことで、団の印象に一役買えたようです。よかった~

ソロをもらうたび、演奏技術が上がっていきます。前回のソロではビブラートが課題かなって思っていたけれど、今回私に向いた表現方法が少し定まったように感じました。また精神面でも少し強くなって、演奏の中で”私はこうしたい”という自己主張ができるようになってきたように思います。これはすごく勇気のいることなので、まだまだできたとは言い切れませんが、少しずつ自分の演奏に「これでいいんだ」と思えるようになってきました。

ダニング=クルーガー効果
ゆり

図的にまるでベテラン間近みたいになっちゃいましたが、全くそういう訳では無く、右方向へは無限に続くと思ってください~

ラフマニノフ交響曲2番

やはり暗譜って大事です。今回、指揮者が本番でいつもよりゆったりと歌うような指揮をしました。これにより事故が多発しました。本番中指揮を見たことで、暗譜をしていない人が落ちたのです。

安定的な曲であればまだしも、ラフマニノフは譜面が難しいです。
裏拍が拍の頭になることが多く、いきなり2拍子カウントに変わるところもあり、休符を数えるだけでも一苦労。そしてこれでもか!というほど音を重ねているので(もはやこれ吹いたところで聴こえないでしょというところもある)、同じ楽器でも1stと2ndで違う動きをし、隣の人を頼ることができず管楽器は全員ソロな状態です。
おまけにテンポも揺れるわ調も変わるわ、幾何学模様すぎて、つまり彼の曲を楽譜に噛り付いた状態で演奏するには無理があります。

でもアマオケ。暗譜していない団員も指揮を見ない団員もいます。

かく言う私も#♭数か所落としました。懺悔。

ゆり

あの・・・本番の時にだけ「これで本当によかったっけ?」と、無意識でやっていたところに急に疑問を持ちだす現象って何なんでしょうね

隣のオーボエ吹き

隣の席にいたオーボエ吹きが、本番の私の演奏を「悪くない」と、連呼していました。

彼は40代のおじさんで、よくため口を使ってからかう仲なのですが、私は彼のオーボエが好きだし演奏スタイルも尊敬していて、そんな中で「悪くない」と言われたのは、悪くないですね。

そんな彼に「お前はこれからどうすんだ?」と聞かれ、酔っ払いが言っていることはよく分かりませんが、たぶん「これからも続けろよ、もったいないぞ、もっとうまくなれ」という話だったのだろうと思います。彼の目指す奏者には憧れないけど、なんだか師匠のような感じがしますね。どこかでまた共演したいな。その頃にはリード削れるようになっていたらいいな。

余談:指揮者の服装について

前々から疑問に思っていた、練習の時の指揮者の服装。女性でも男性でも黒色Yシャツが多いのは何故なのでしょうか。それでなければ濃い青色とか。やっぱり威厳とか考えて選んでいるのかしら、と思っていたら今回先生が真っ赤なYシャツを着て現れました(下画像)。

すごい気合の入れようだ!と思ったのも束の間、先生が練習の冒頭で、深刻な面持ちで「みなさんに謝らねばならないことがあります・・・」と話し出します。一体何事かと思えば、「師匠には、絶対に目がちかちかするような服は着るな!と言われているのですが、洋服の用意を忘れてきてしまって、もう、こんなちかちかするような服を着てきてしまいました・・・」とのこと。思わず笑ってしまう団員一同。指揮者の服は、指揮の見やすさも考えられていたのですね。

ちなみに練習時の団員の服装はというと、人それぞれです。ミニスカートはいませんが、デニムやらジャージやら自由な恰好をしています。私はお腹が絞められているのが苦手なので、ウエストがゴムのものだったりワンピースだったりを着用しています。また踏ん張りがきかなかったり、壇上で躓くなどがないように、リハの時だけ本番用の黒パンプスを履いたりしています。団員には上品な女性が多く普段からヒールを履かれている人が多いので、前日パンプス派は少数です。たまに、そんな彼女たちからお洋服チェックが入ることもあります。
どこで買ったの~?今日もすてきね~!若いからかしら~ やいやいやい。

アマオケらしさ

さて演奏会が終わったところで、団員たちは早速次の演奏会に向けてスタートするところですが、私は今回をもって離脱します。夫の勤務地へと引っ越しをするため、退団するのです。

私はこのオーケストラに育ててもらいました。ギリギリまでこのオケの空気感に身を浸していたいと思うくらい名残惜しいです。ありがたいことに片思いではなく、また戻っておいでと口々に言ってもらえて、大変恵まれていたのだなあと感慨深く思っています。この寂しさを埋めるべく、次もどこか団体を見つけて絶対続けようという気持ちでいます。

ありがたいことに、私がいなくなることを大きな損失とまで言ってくれた人たちがいました。
思うにそれは、演奏面での奏者としての損失というよりも、アマオケという趣味団体を形成する一員として、という意味で出た言葉のように思います(演奏的な損失であったならそれはそれで嬉しい限りですが)。

たとえば今回の私のソロが出来上がる過程は、大変アマオケらしかったと思います。

団員たちは本番に至るまで、まるで私のレッスンに付き合わされていました。当初、私が歌い方に迷うあまり、ひょろひょろとしたものを提出し、周囲を心配させ、合奏で何度も取り上げて頂くことで、最後はなんとか形にしてお客さんに届けることができました。この成長過程を見守る(そうせざるを得ない)時間があったからこそ、本番終了後に団員から数えきれないくらい「今日の演奏よかったよ~」とお声がけいただけたのだろうと思います。ありがたい限りです。

こちらは申し訳なさを胸にあがくのに必死だっただけなのですが、見ている側としては、すくすく育つ様子というのは面白いところもあったのだろうと想像します。

またアマオケはあくまでも趣味の団体です。音楽が楽しい、もっと上手くなりたい、という気持ちを共有する場所です。
私は練習に参加するのも、メンバーと誰かれ構わず交流できるのも楽しんでいました。
“なんだか楽しそうな様子で過ごしている若い人”という面でも、損失と言って頂けたのだろうと思います。

アマオケの難しいところ

飲みの席に行くとやっぱり不満のある団員の意見を耳にします。私は楽しいところだけやらせてもらっていて、あまり思い当たらなかったのですが、80名規模の団体ともなると、合う合わないが各所で勃発しているようです。

あの人の演奏スタイルが合わない / あの人は演奏が上手じゃないからなんとか引きずりおろしたい / 君があの人に意見してきてよ / 運営あの人に頼りすぎじゃないか / あの人の合奏だと楽器を構える時間が少なくて嫌 etc・・・

可哀そうだったのは、演奏の上手な人が「活動を休みたい」と言った時に、運営団員たちから糾弾されていたことです。彼が下り番になったら、言葉を選ばすに言うと下手な人がトップを吹くこととなり団員のモチベーションが下がる、とのこと。

それだけ彼が、団が求める実力を持っているというのは素晴らしいことだと思います。しかし団の演奏レベルやモチベーションについて彼に責任を負わせるような形で引きとめる方法には疑問が残ります。

彼はとても上手だし、温厚な性格です。辞めたいというのなら止めませんが、もし仮にこのやり方が嫌で団をやめたとしても、辞めた先でも同じことが起こりそうです。

その場では「アルトクラ専門にするかトラになりな」と助言して慰めたわけですが、実際彼には彼自身で線引きする必要があり、団としてもその線引きを守る状態でなければなりません。それを超えるのであれば仕事として依頼をすべきです。

彼の”楽しい”が守られることを期待しつつ、個人的にはオケを続けていてほしいなと思っています。彼との演奏はやっぱり楽しいので。

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