1905年5月22日 ストラスブールで行われたアルザス音楽祭にて、ベートーヴェンの第9交響曲を指揮するマーラー(指揮台のマーラーを写した写真は現時点で6枚が確認されています)
音楽愛好家を続けると、色々な場面に遭遇します。長年の愛好家、いわゆる「聴いた聴いたおじさん」は健在で、幕間に体験談が聞こえてきます。
カラヤンの普門館ライブ、クライバーの振るばらの騎士とラ・ボエーム。マーラー9を振るクーベリックが日比谷公会堂の音響に不満を感じ東京文化会館の日程と演目を交換、上野にモーツァルトを聴きにきたはずが、日本初演から間も無いマーラー9でさっぱりわからなかった…という話。
ブラームスを見た人は1971年まで(ブルックナーの葬儀にて、当時7歳のベルンハルト・パウムガルトナーが目撃)、ニキシュの指揮を見た人は1995年まで(最後の弟子であるエフレム・クルツ)、マーラーの指揮を見た人は1988年までいました(独自研究によればもう少し後まで残っていたかもしれません)。
過去記事もご参照ください
カラヤンやクライバーの指揮を見た人、いわゆる聴いた聴いたおじさんもそのうち数が少なくなり、いつか指揮台の神々、音楽の歴史そのものの証人となるでしょう。
そして、ひとつの問題にたどり着きます。
フルトヴェングラーの実演を聴いた人はまだ残っているのか?
欧米では若干名いると思いますが、エリザベート夫人(2013年死亡)亡きいま、正確な数は分からないでしょう。
唯一確実なのは指揮者のヘルベルト・ブロムシュテットです。ブロムシュテットは伝説的な1951年の「バイロイトの第9」をはじめとして、フルトヴェングラーの実演をいくつも聴いています。
日本にはもう残っていないでしょう。指揮者の朝比奈隆(2001年死亡。ブルックナー4。さらに会話もした。他にフルトヴェングラーと会話した日本人は貴志康一ぐらいでは?)、音楽学者の渡辺護(2007年死亡。フィデリオ、モツレク及び新世界!)及び音楽評論家の吉田秀和(2012年死亡)などが最後と考えられます。
日本でもお馴染みのブロムシュテットですが、ブロムシュテットを見ることで「フルトヴェングラーに会った人に会った」ことになり、フルトヴェングラーとの緩やかな同時代性を獲得するのです。
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