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【美術鑑賞】カメイ美術館 カメイコレクション展 Ⅲ期(2023.12/5~2024.3/3)

カメイコレクション展3期のチラシの表面

今回の展示も季節に合わせた素敵な作品が並んでいました。平日昼間の美術館はとても静かで、私以外にいても一人くらいしか鑑賞者がいません。おかげであっちへふらふらこっちへふらふらと自由に贅沢に楽しめました。楽しかったです。

ゆり

ここから感想を描いていきますが、美術の勉強は中学生以来したことの無い完全初心者ですので、ご了承の上お読みいただけますと幸いです。

目次

アジアの蝶切手

カメイ美術館(カメイ記念展示館)は、歴代のカメイ株式会社の社長さんたちが収めた蝶の標本やこけし、絵画・彫刻を展示している美術館です。特に蝶の標本は、夥しい数が常設展示されていて、蝶への熱量を感じます(通い始めて1年経ち、やっと最近きれいだなと見れるようになってきました)。今回の「アジアの蝶切手」の展示も、標本だけでなく切手集めにも活動を広げていることから、本当に蝶がお好きなのでしょうね。

中国製の切手にカンボジア製の切手。アジア各国の切手に登場する蝶を眺めていると、住む場所は違えど同じものを愛することができる、人間の感性というのはそうそう違わないのだという所に嬉しさがありました。

しかし現実的に考えて、よく女性向けに蝶をモチーフにしたアクセサリーなどを見かけますが、実際大きな蝶を目の前にして落ち着いていられるのかというとそうではないように思います。神秘的で美しく、しかし同時に嫌悪感を持たれることもあって、蝶って唯一無二な存在ですよね。

カメイコレクション展 Ⅲ期

さて絵画鑑賞の時間です。

はじめに出迎えてくれるたのは、金箔に有機的な濃赤色が塗られた日本画風の花の絵と、グレーの冬空に痩せた木が立ち並ぶ絵でした。このコレクション展は年末年始を挟みますから、入口からさっそく金・銀とめでたい色合いを並べる、なんとも粋な計らいです。

この新年の雰囲気をそのままに続いて登場するのが、石踊達哉の「千羽鶴」。金色の細かな青海波(円形波)を背景に、千羽鶴が飛んでいる情景です。この絵の面白いところ青海波の使い方です。ライトの当たり方で正面から見ると金色の青海波なのですが、右から見ると真っ赤な背景になり、角度によってはなんと日の丸が浮かび上がっていきます。紙のお札と同じ方法で描かれるのでしょうか。色んな背景を飛ぶ千羽鶴たちが面白くて、右行ったり左行ったりと、傍から見たら変な動きをしていたと思います(何分私しかいませんので思う存分この不思議を楽しめました)。

その後は静物画ゾーンに入ります。特に目を引いたのは、アンドレ・コタポ(かわいい名前ですが男性です)の「推薦とピンク色のチューリップの花束」です。最近ふとしたことから女性性について考えていたのですが、まさにこの絵はかわいい色で女性らしい雰囲気で、見ていて気持ちが軽くなるような作品でした。油絵作品で、白やピンクの花びらにはたくさんの絵の具が盛られていて、濃厚な印象です。こういうぷっくりしているものにときめくのは何故なのでしょうね(シールとかUVレジンとか)。

ラウル・デュフィの「雨晴れる」は何度も展示されている絵です。何回も飾られるということは面白さがあるのでしょうから、今回もその良さを分かろうと試みたのですがいまいち掴めません。この雨による一連の流れが一目で分かる、4次元の目線で見られるというところが良いのでしょうか。

次は冬景色が続きます。こう雪の絵がいくつも並んでいるのを見ると、雪化粧にも色んな種類があり、美しい山々もあれば、迫力で倒壊しそうな家もあれば、面白く積もっている様など、色んな一面があるのですね。これらを1つの空間から覗けるだなんて、瞬間移動をしているようです。

その中で吉見庄介の「コーボルト谷」が印象に残りました。「コーボルトの谷ってどこだろう、樹氷って日本以外でもあるものなんだな」なんてちょっと残念に思っていたら、コーボルトって蔵王にある場所なのですね。危うく東北民としてのアイデンティティの喪失が起きるところでした。空は深い濃紺で、いったいどれくらい空気が澄んでいるのでしょうか。立ち並ぶ樹氷たちは、まるで家族のようにも見えるし、どこか物語に出てくる不思議な風景にも見えてきて思わず見入ってしまう作品でした。

そして、私が今回一番気に入ったのは塗師祥一朗の「山村」という作品でした。展示内でおそらく一番サイズが大きく、目立つところに飾られていました。サイズ的に迫力はあるのですが、描かれているテーマ「山村」という言ってしまえば凡庸なテーマ。しかしどうしてこの作品を見ていると、中に入り込んだような気持ちになりました。そこは初雪の翌朝でした。やわらかな雪が一晩で世界をがらっと変え、昨日は土の道だったのに今日は真っ白。正面を見たら山の木々は雪で埋もれつつあり、今年はもう登れなさそうです。この山村に暮らしているような臨場感があって、夢の中にいるような、身体的な感覚はないけれど、本当に絵の中の世界に入り込む面白い感覚を味わえました。

その次には冬の富士山が並びます。白富士と赤富士。同じ地点からきっと夜と朝で描いたのでしょう。はじめ白富士は昼間の絵だと思っていたのですが、よくみると空にあるのは太陽ではなく月。夜だからこそ山々の輪郭が明るく見えているのだと気づけた時はとても嬉しくなりました(違かったりして・・・笑)。赤富士は朝焼けだと思いましたが、夕焼けかも。そちらはまだ推理しきれていません。

最後には「暖かい日」という題で、荷押し車に風車とパンを乗せて販売する白髭のおじいさんと、そこにやってくる青色と赤色のレインコートとブーツをはいた女の子たちの絵がありました。・・・どこが暖かいのでしょうか。昨日まで寒かったけど今日は暖かいからおじいさんが売りに出てきたのでしょうか。こんなおじいさん日本にはいないけれど女の子たちは日本風ですし、どこの場面を描いたのでしょうか。謎の多い絵です。

感覚的に絵を楽しむのも好きですが、こうやってどういう場面なのだろうかと想像を膨らませるのも、美術鑑賞の楽しみ方の一つですよね。

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