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ジョーンズ博士の冒険をたたえる(インディ・ジョーンズと運命のダイヤル)

インディ・ジョーンズと運命のダイヤルの映画広告ポスター

良い点
・ジョーンズ博士の冒険を締めくくる物語として長年の愛好家も満足できるプロット
・冒頭30分はトーマス・クレッチマンの独断場、軍服の似合う映画史上究極のドイツ将校役は必見

悪い点
・異星人の次はついに歴史改変もの
・なんのために行動しているのか分かりづらい登場人物たち
・1969年のシチリア島で黒服コスプレのネオナチ団体が活動中
・ややテンポが早すぎて落ち着きがない

私は小さい頃から映画が好きですが、中でも一連のインディ・ジョーンズ作品は特に熱心に研究しており、古代文明好きと合わせて私のライフワークのひとつと言えます(今回は3回観ました)。

冒頭30分は1945年の物語で、当時OSSに所属し略奪美術品の捜査を行っていたジョーンズ博士の活躍が描かれています。ここでの主役はトーマス・クレッチマン演じるウェーバー大佐でしょう。騎士鉄十字章、ドイツ十字章および白兵戦章を佩用した完璧な軍装に加え、ため息混じりのドイツ語にすっかり痺れてしまいます。

この人はドイツ将校役での名演が多く、「戦場のピアニスト」ホーゼンフェルト大尉(廃墟のワルシャワでシュピルマンと対峙するシーンは本当に鳥肌がたちました)と、「ヒトラー最期の12日間」フェーゲライン親衛隊中将および「ワルキューレ」レーマー少佐などはおなじみでしょう。またバイオハザードやキング・コングにも出てましたね。

本作では、特に軍服の考証が良くなったと思います。「レイダース」および「最後の聖戦」での考証はひどく、どこで見つけてきたのと思うようなチープな軍服に当時存在しない装備などが出てきて???となったものです。

右袖に戦車撃破章を3つもつけた副官が高射機関砲の暴発に巻き込まれてあっさり吹き飛ばされてしまったのが残念でした。

マッツ・ミケルセン演じる悪役「アラバマ大学教授シュミット博士」ことユルゲン・フォラー博士は元ナチス党員の宇宙物理学者とのことで、ペーパークリップ作戦で戦後渡米した月面ロケットの開発者フォン・ブラウン博士をモデルにしています。彼自身も親衛隊少佐でしたが、幼少からのロケット狂で兵器開発より月面ロケットの方に興味があり、非協力的だとしてゲシュタポに拘束されたこともあります。なお、劇中で重要な役割を果たすフォラーの時計は明らかにハンハルトのフリーガークロノでしょう。

ややマッドサイエンティストのような雰囲気があったので、V2ロケットの膨大な資料と共にユンカースJu390型機に乗り姿を消した(と言われていますが不明。ゲシュタポ長官ミュラーと並び戦後行方不明となっている大物のひとり)ハンス・カムラーや、アーネンエルベ事務長としてデタラメな科学研究を行ったヴォルフラム・ジーヴァスなど複数の人物をモデルにしているようです。

なお、キーアイテムとなる「アンティキテラの機械」は実在します。1900年代初頭に海綿取りによって古代の沈没船から引き揚げられたところまでは歴史的事実です。しかしながら、実物はタイムマシンなどではなく単なる精巧な機械仕掛けの暦です。

ストーリーについて詳しく触れません。特に気になったのは、登場人物たちの行動の背景がさっぱりわからず、何のために活動しているのか意味不明で説得力に欠ける点です。ここはちょっと不親切といえましょう。

モロッコの盗品市場は「レイダース」でのジョーンズ博士の宿敵ベロック博士が根城にしていたという設定があるので、過去作品からの繋がりを考えても自然です。また、せっかくアントニオ・バンデラスが出てるのに僅かな時間で退場してしてしまうのはあまりにもったいないと思います。シャイア・ラブーフがお騒がせ俳優になってしまったため(?)、4作目で彼が演じた息子マッドはベトナムで戦死した設定となり、本作には登場しませんでした…

いろいろ書きましたが、長年の愛好家からしても満足できる内容で、ジョーンズ博士の物語を締めくくるのに素晴らしいプロットだと思います。みなさんもぜひ劇場に足を運んでくださいね。

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