私たちは、IWCインヂュニアを婚約時計としました。
彼はペアウォッチ推進派で、私は時計も指輪もいらない派でした。よって婚約時計の合意に至るまで、特に私の内面で紆余曲折ありましたので、そのお話をしたいと思います。
婚約時計にするか悩んでいる方、ペアウォッチを贈ろうと思っている方の参考になれば幸いです。
その腕時計は受け取れません
はじめて彼がそれを持ってきた時、私は受け取りを拒否しました。プロポーズではない時に、ペアウォッチにしようとIWCインヂュニアを持ってきてくれたのですが、もはや婚約レベルの値段、男性的なデザイン、使い方が複雑そうな機械式時計。
当時将来の約束をする余裕も無かった私にとって、その機械式時計は物理的にも精神的にも重すぎて、身に余りました。
彼からは、以前よりペアウォッチに憧れているという話をよく聞いていました。私もペアウォッチという発想には好感を持っていましたが、引っかかっていたのはインヂュニアの一点張りだったことです。彼にとってペアウォッチをするなら愛するインヂュニアでなければ意味がなかったのでしょうが、こちらとしては好きじゃないデザインのものを毎日つけることは苦行でしかありません。
それに私にはすでにお気に入りの腕時計をがありました。成人を祝って買ってもらったシチズンxC(ネイビー)です。毎日これを付けていて、長く大事に使おうと決めていたので、そもそも新しい腕時計が不要でした。
大事にしている時計を外してまでペアウォッチをするのであれば、せめて私が気に入って使えるものにしてほしい。クラシックなデザインのものは長く大事にできると思うから、カルティエタンクとか、レベルソのようなものを。IWCならポートフィノにしてほしい。しかし彼は一心にインヂュニアがいかに女性がつけても魅力的かということを説いてきます。そんな彼に私も途中から折れてきて、つけるかつけないかは置いといて受け取ることにしました。
宝の持ち腐れ感
私が「婚約の婚約」という名目で折り合いをつけて、なんとか受け取ったのは今から2,3年前のこと。正直受け取った後も魅力を感じることができず、でもつけてあげないとかわいそうだな、とちょっと苦しい思いをしていました。
まず使い方もよく分からない。WindowsからiOSに変えて、なんとなく使いこなせずMacを開かないままにする。趣味用と思ってアウトドア用品を買ったはいいものの(使うまでのステップを具体的に想像できなくて)倉庫に眠らせている。一回慣れてしまえば大したことないのですが、当時はそんな感覚でしばらく使わない時期を過ごし、彼と会う時にだけつけるようにしていました。当初メンテナンスは全て彼がやってくれて、彼もそれを楽しんでいて、自分が管理するものではなく「借り物」「なにかあったらすぐに返却する貴重品」という認識でいました。
ただ人間慣れるもので、彼のメンテナンス風景を見ている内に私もやり方を学び、針の調整だけでなくベルトの分解もできるようになりました。そうやってちょっとずつこの時計が「身に余るもの」から脱していったように思います。
インヂュニアがミニマリズムを満たすことに気付く
断捨離をきっかけに、私はミニマリストに憧れるようになりました。
ミニマルな生活では、身の回りのものを必要なものだけに絞って、大事に使っていきます。そうすると手元には飽きの来ない、すぐ壊れない、シンプルで質の良いものが自然と残ります。そこでふと、アクリルケースに収納しているインヂュニアに目が留まりました。
憧れのタンクは革ベルトを交換したりしなきゃいけないし、レベルソだと水につけるのには躊躇します。対してインヂュニアはとにかく丈夫です。山にも海にもどこにでもつけることができる、手入れも水洗いで手軽にできます。ここで初めて需要と供給が一致し、日々着用するようになりました。
魅力が見えてきた
受け取ってから1年くらい経った頃のことです。
スマートウォッチの利用も高まる中、竜頭を回して時間を合わせるというアナログ作業が魅力的に思えるようになりました。彼と出かける前に一緒になって、秒針を合わせる瞬間は結構楽しいものです。
また、山に持って行ってステンレスベルトに傷をつけてしまい「もう山には持っていかない」と話した時、彼から「IWCで直せるからガシガシ使ったら良いよ」と言われ、本当にラフに使っていいんだなと安心して使えるようになりました。
それから、ほどよい重さと大きさがある時計なので、外出するとき付け忘れていたら手首の軽さですぐに気づくので、ほとんど時計を忘れることはなくなりました。
これはたまになのですが、一応高級品を身に着けているということで、百貨店を歩くときや劇場に足を運ぶとき等にちょっとだけ自信をもって歩けるような気がします。
でも一番の魅力は、今、私はあまり時計を付けていることを意識していない、ということです。これはベルトのデザインと私が十分に扱いに慣れたおかげだと思います。
婚約指輪ほしい?
時計を受け取ってから数年になって、彼からそんなことを聞かれるとは思ってみませんでした。さらに「ダイヤモンド入りのポートフィノもあるよ」とさえ言ってくれて、私の好みに耳を傾けてくれたことに嬉しくなりました。
しかし高額商品や思いの強いものは重たく感じてしまい、そういったものをいくつも持つと逆に疲れてしまう性格です。近年ミニマル思考が高まったこともあり、婚約指輪もダイヤ付きポートフィノも普通のポートフィノもいらなくなっていました。
そうして「婚約の婚約時計」を「婚約時計」とすることに合意しました。今後結婚指輪だけ探しに行こうと思っています。指輪に関してもカルティエとか時計ブランド縛りがあるのかな、と思っていましたがどうやらそうでも無い様子。今はたまたま三越で足を運んだ田崎の指輪が気になっていますが、照れくさくてなかなか一緒には見に行けていません。
婚約時計、ペアウォッチを贈ろうとされている方へ
今でも私はペアウォッチにするなら二人とも気に入るデザインであってほしいと思います笑。
私の場合は運よく好きになれましたが、そうでなければ、例えそれが誰もが羨むものだったとしてもただの重荷になることだってあり得ます。ぜひ相手の好みを聞いて、どうしてもインヂュニアがいいという方がいれば、毎晩インヂュニアの良さを説きましょう。
強いて婚約指輪より婚約時計の方がいいところを上げる
・婚約指輪よりもつけていられる状況が多い
・指輪よりは失くしにくい
・婚約指輪は一方だけが持つものになるけれど時計なら2人ともつけられる
・実用性がある
私の場合、時計を見て婚約を実感する、ということはありません。それを狙うのであれば指輪の方が効果が高いです。現に私は個人的に購入した指輪を右手の薬指につけっぱなしにしていて、そちらの方が繋がりを感じられます。ただ、ごうたは同じ時計を付けていることに何か感じるみたいです。自分の大好きなものを共有できているということが、そうさせているのかもしれません。それを聞くと「時計お揃いでよかったな」と思います。
お揃いの腕時計でそういう実感がしたいなら、それを伝えてみるのも手だですね。
コメント