マーラーも指揮台に立った英国ロイヤル・オペラ(コヴェントガーデン)の2024年来日公演を観ました。6月22日は神奈川県民ホールでヴェルディ「リゴレット」6月23日は東京文化会館でプッチーニ「トゥーランドット」です。
パッパーノの指揮は見事なもので、情熱的ながらもテンポ良く、オケの音量を絶妙に抑えたバランスの良い好演でした。リゴレットはミアーズのダークな演出、トゥーランドットはセルバンのおとぎ話のような演出(山車や京劇風の踊りなど、ここまで東洋趣味に寄せた舞台は今どき珍しいのでは?)が良かったです。
リゴレットではシエラのジルダが秀演であり、とりわけ大きなカーテンコールを浴びていました。
トゥーランドットは、タイトルロールのラドヴァノフスキーが数日前に降板するという非常事態の中、代役となったフンデリングの氷のような歌唱は圧倒的な声量を持ってホールに響き渡り、極めて強い印象を残しました。リューのラングワナシャも好演と言えましょう。
リゴレット、トゥーランドットいずれも素晴らしい音楽世界ですが、登場人物達には全く共感できません(リゴレットを観るたび、シェイクスピア的で全員不幸なひどい話だと憤慨します)。
トゥーランドットは、最も愛好するオペラ作品のひとつです。冒頭の不協和音からして、これは20世紀の音楽だということを再認識します。しかしながら、アルファーノ補筆版ではリューの死以降の音楽的なクオリティが低く、あっという間にトゥーランドットが心変わりし、これまで出てきたモチーフの詰め合わせによる大円団(誰も寝てはならぬの旋律による大合唱で終わる)です。なお、今回のセルバンの演出では、アルファーノ補筆版による大円団の最中、リューの葬列が横切るので綺麗さっぱりとは行きませんでした。
もうひとつのベリオ補筆版も、ほとんどベルクのような無調の音楽世界であり、こちらも違和感があるのは事実です(2023年2月の二期会公演で観てびっくりしました)。
2024年も、NBSが招聘する引っ越しオペラは本当にクオリティが高く、満足のいくものでした。
過去記事もご覧ください。
2025年はウィーン国立歌劇場が来日公演を行います。モーツァルト「フィガロの結婚」とリヒャルト・シュトラウス「ばらの騎士」非常に楽しみです。
会場については懸念もあります。神奈川県民ホールは、指環の日本初演を敢行したホールとして知られていますが、老朽化のため無期限の休館に入ります。私の大好きな東京文化会館も、2026年から長期間の改修工事に入るとの情報もあり、新国立劇場と仲が良くないNBSにとっては、将来的な会場不足が問題になるでしょう。
ヴェルディ「リゴレット」
指揮:アントニオ・パッパーノ
演出:オリヴァー・ミアーズ
美術:サイモン・リマ・ホールズワース
衣裳:イローナ・カラス
照明:ファビアナ・ピッチョーリ
ムーヴメント:ディレクターアナ・モリッシー
マントヴァ公爵:ハヴィエル・カマレナ
リゴレット:エティエンヌ・デュピュイ
ジルダ:ネイディーン・シエラ
スパラフチーレ:アレクサンデル・コペツイ
マッダレーナ:アンヌ・マリー・スタンリー
モンテローネ伯爵:エリック・グリーン
ジョヴァンナ:ヴィーナ・アカマニマキア
マルッロ:ヨーゼフ・ジョンミン・アン
マッテオ・ボルサ:ライアン・ヴォーン・デイヴィス
チェプラーノ伯爵:ブレイズ・マラバ
チェプラーノ伯藤夫人:アマンダ・ボールドウィン
小姓:ルイーズ・アーミット
門衛:ナイジェル・クリフ
ロイヤル・オペラ合唱団
ロイヤルオペラハウス管弦楽団
プッチーニ「トゥーランドット」
(アルファーノ補筆版)
指揮:アントニオ・パッパーノ
演出:アンドレイ・セルバン
再演演出:ジャック・ファーネス
美術・衣裳 サリー・ジェイコブス
照明:F. ミッチェル・ダナ
振付:ケイト・フラット
コレオロジスト:タティアナ・ノヴァエス・コエーリョ
トゥーランドット:マイダ・フンデリング
カラフ:ブライアン・ジェイド
リュー:マサバネ・セシリア・ラングワナシャ
ティムール:ジョン・レリエ
ピン:ハンソン・ユ
パン:アレッド・ホール
ポン:マイケル・ギブソン
皇帝アルトゥム:アレクサンダー・クラヴェッツ
官吏:ブレイズ・マラバ
ロイヤル・オペラ合唱団
ロイヤル・オペラハウス管弦楽団
NHK東京児童合唱団
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