2025年のWatch and Wondersでは、インヂュニアに新しい仲間が増えました。IWC研究家として予想できた方向性で新鮮味はありませんが、いずれも個性的なmasterpieceで非常に好感が持てます。
幸運にも即日デリバリーされたオートマティック35をメインに、新作を触った感想を書きます。
Ref.324901 オートマティック35
2005年の再登場以降、小径モデルはRef.4515インヂュニアミッドサイズのみでした。これはRef.3227を34mmにサイズダウン、軟鉄製耐磁インナーケースを省きETAベースのCal.30110を載せたものです。ぎゅっと凝縮された塊感が魅力でした。
今回は35mmとなり、Ref3289をサイズダウンした外観を持ちます。ブレスレットのセンター駒がポリッシュとなり、以前のツールウォッチ然とした個性的な外観から、洗練された意匠です。かなり軽く、取り回しの良さが際立ちます。新旧の小径インヂュニアを比較すると、違いが際立ちます。
なお、ブレスレットや文字盤といった全体のディテールは、2023年のRef.3289に準じますので、過去記事をご覧ください。

裏蓋はスケルトンバックとなり、新開発の小径キャリバー、ゴールドのローターが綺麗なCal.47110が見えます。素性は不明ですが、おそらくリシュモングループ共通キャリバーでしょう。ペラトン式自動巻きのようなマニアック要素は薄いですが、基礎体力はしっかりしたものだと推察します。
なお、今回は妻へのプレゼントとなりました。妻は登山やウォータースポーツでも常に同じIWCを着けるので、良いトーチャーテストとなるでしょう。

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以下、写真NGだったので、Webサイトの写真をお借りしてその他の新作について書きます。
インヂュニアセラミック42 Ref.338903
2014年のセラミックモデルRef.3225はラバー/ファブリックストラップでした。セラミックのブレスレットは初ではないでしょうか? セラタニウムではないのが意外でした。裏蓋はスクリューバックではなくねじ止めとなっています。スモークガラスからはペラトン式自動巻Cal.82110が見えます。耐磁無しかつスケルトンバックの大型モデルが出る流れは、10年前と同じで既視感がありますが…。
サテンとポリッシュを使い分けた加工は極めて精緻かつ見事で、オールブラックの意匠は格好良いです。非常に軽量ですが、素材に由来する質感は意見が分かれるかもしれません。また駒調整はIWCメタルブレスレットシステムではなく、ピンをハンマーで叩く方式のため、衝撃による割れに要注意でしょう。
金無垢インヂュニア サイズ違い2種
金無垢のブレスレットモデルが1990年代のRef.9239以来約30年ぶりの登場です。これまでも各世代で金無垢ケースはありましたが、今世紀に入ってからはレザーストラップのみのセッティングでした。
黒文字盤のRef.328702は、僅か55本が存在する金無垢のインヂュニアSL「ジャンボ」Ref.9232を想起させます。私は昔、この博物館級のRef.9232を手に取る幸運に恵まれましたが、その時の圧倒的な重厚感、マッシブさは忘れられません。金無垢かつ重量があるため、長期間使用した際の、ブレスレットのヨレがどの程度か気になります。脱帽価格のため全く手は出ませんが、今回のハイライトでしょう。
Ref.344903パーペチュアルカレンダー41は、複雑表示をシンプルな文字盤にまとめて好印象です。気になるのはIWC伝統の西暦4桁表示ではない点、外観がジラールペルゴのロレアートにますます似てしまった点です。
文字盤の色違いを増やす手法には食傷気味ですが、緑色が好きな人にとっては良い選択肢でしょう。
新作の大部分が軟鉄製耐磁インナーケースを省いた裏スケルトンであり、非ネジ込みリューズ(防水技術の進歩とも言えますが)、グループ汎用ムーブメントという点は、良くも悪くも最近の流行でしょう。ツールウォッチ然とした過去の立ち位置から飛躍を遂げつつあり、長年の愛好家としては嬉しい反面、複雑な気持ちもあります。
いろいろ書きましたが、最新の技術を取り入れた見事な新作群は、いずれも時計製造における飛躍的な挑戦そのものであり、インヂュニアの名に相応しいものです。IWCインヂュニア研究家・愛好家として非常に高く評価します。


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