お気に入り度◎◎◎◎◎
おすすめ度◎◎◎◎◎
良い点
・原点に忠実な手巻きポルトギーゼの最高峰
・端正かつ精緻を極める外観
・圧倒的な8日巻きのCal.59215
悪い点
・手巻きが疲れる(8日巻きなので当然ですが…)
この他に…欠点が思いつきません。完璧の時計!
ポルトギーゼについては3部作でその誕生の物語を書きました。ぜひご覧下さい。

余談ですが、私は「タンタンの冒険旅行」が大好きです。過去タンタンに似てると言われた時期もあり、嬉しくて同じような服装をしていた事もありました。
登場人物に、タンタンの友人であるポルトガル商人の「オリベイラ」さんがいます。

商売上手な彼は、ペルシャ湾の船上、中東戦争に揺れるアラビア半島の砂漠のど真ん中など、どこでも市を開きあれこれ売りつけます。

さらに、現地の言語や風習に精通した彼はタンタンの窮地にいつも現れ、ポルトガルのロゼワインを勧めてもてなし、幾度も手助けしてくれるのです。

私は、ポルトガル商人がシャフハウゼンのIWC本社を訪れた物語を思い出すたび、オリベイラが時計をオーダーする様子を連想してしまいます(商売上手な彼であれば、もっとRef.325が売れたかもしれません)。
また、世界を飛び回るタンタンが腕時計をつけているとしたら、想像するのはオリベイラから売りつけられた初代ポルトギーゼRef.325かロレックスのオイスターパーペチュアルでしょうか。想像ばかりが広がります…。

さて、時計の紹介に戻ります。
2014年のわずか1年間、たった数百本が製造されたと言われています。原点に忠実な手巻きポルトギーゼの最高峰です。現行の3針40mmも大変魅力的ですが、やはりポルトギーゼは手巻きかつこの大きさ(43mm)を本来の身上としていると言えましょう。

手巻きポルトギーゼは2008年以降たびたびローンチされましたが、いずれもジョーンズキャリバーや繊細なピアジェの機械を載せたもので、ロービートかつクラシカルな復古調に振ったものでした。
最新鋭の高性能・高精度自社ムーブメントを載せつつも、初代ポルトギーゼのデザインコードに忠実な本作は、手巻きポルトギーゼの最高峰として君臨しています。また、2018年の創業150周年記念のジュビリーコレクションの記念モデル(ラッカー文字盤)のベースにもなりました。

全体の印象として、のっぺりとしながらも上品であり、ポルトギーゼの端正な佇まいそのものです。オリジナルにはなかったデイト表示が追加されていますが、8日巻きのため、実用性を重視したのでしょう。窓の位置も考えられており、違和感は全くありません。

アラビアインデックスの仕上げも精緻を極め、自社ムーブメントを載せた高級機としての矜持を感じさせます。また、スモールセコンドは60秒表示のみ赤色でアクセントを添えており、内側の彫り物も凝っています。

ケース側面を見ると、カーブしたサファイアガラスがドーム型に盛り上がっており、さながら往年のアクリル風防のようで大変美しいです。ラグはしっかりと曲げられており、またストラップの取り付け位置も下の方にあるため腕周りが細くても装着感は良好です。

裏返すと息を呑む美しさです。

大部分がプレートで覆われ隠れておりもったいないですが、耐久性重視のIWCらしく好感さえ持てます。もちろん、こまかな仕上げも良好です。パワーリザーブインジケーターは裏側にあります。8日巻きのため80回以上巻く必要があり正直疲れますが、週末にのんびり巻くのは楽しくなかなか贅沢な時間でもあります。

IWCの3気圧防水は水泳時の着用も可能ですが、裏蓋はねじ止めになっています。ケースの腐食防止のため、着用後は汗や水分を拭きあげ綺麗にしてあげると良いでしょう。アリゲーターストラップはもちろん、パーロンストラップやNATOストラップに合わせても粋だと思います。

私は仕事ではスーツにアリゲーターないしクロコダイルのベルトを着用していますが、ポルトギーゼのベルトも合わせるとさらに際立ち、ひときわ品のある組み合わせになります。

本当に美しい時計です。
IWC愛好家にこそ、ぜひ手に取って頂きたいです。
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