お気に入り度 ◎◎◎◎◎
おすすめ度 ◎◎◎◎◎
良い点
・往年のインヂュニアを見事に再解釈した気品ある外観
・120m防水を誇る強靭なチタンケース
・スモールセコンドの秒針が稲妻マーク
・自社製フライバック付きクロノグラフCal.89631
・軟鉄製耐磁インナーケースが健在(この世代のインヂュニアでは唯一!)
悪い点
・大型ケースのため
・デフォルトのストラップはややカジュアル
レビュー
流行に流されない真の時計愛好家に相応しい、最高のタイムピースです。ラウンドケースのインヂュニアの最高峰でしょう。限定500本だったのがとても惜しいです。2018年当時、カタログの筆頭を飾るフラッグシップモデルでした。
2016年にRef.3239が廃盤となり、ジェラルド・ジェンタによるRef.1832 を源流とするブレスレット一体型のインヂュニアは姿を消しました。
後継となったRef.3570は、初代Ref.666よりも、2代目のRef,866に姿を似せています。くさび形のラグや幅広のベゼルといったモダンな意匠は、まさにRef.866そのものと言えましょう。

不幸だったのは、Ref.3750が伝統の稲妻ロゴのみならず、耐磁インナーケースも省略した汎用ムーブメントベースで個性に乏しい時計だったということです。極めて良質な外装、12気圧防水の頑強なケースを持ちながらも、支持されませんでした。
クロノグラフなどは極めて秀逸かつうまく纏めていただけに、その真価が知られることが無かったのは残念です。しかしながら。ジェンタ万歳一辺倒であった当時の時局を鑑みると、やむを得ないとも言えます。
そんな不遇な時代のRef.866フィーチャーのインヂュニアですが、500本限定で生産されたRef.380901は目を見張るものでした。

軟鉄製耐磁インナーケース
軟鉄製耐磁文字盤
インヂュニア稲妻ロゴ
120m防水チタンケース
頑強なチタン製ケースバック
自社製自動巻Cal.89631
フライバック機能付クロノグラフ
夜光付き
考え得る中の最強スペックです。
極めて良質な外装、とりわけIWCが得意とするチタンケースに、自慢のフライバック式クロノグラフムーブメントを軟鉄製インナーケースと軟鉄製文字盤で包んで落とし込んだ意欲作でした。
グレード5チタンケースは加工も精緻を極め、ポリッシュ仕上げなどはさながらステンレスケースのようです。クロノグラフのプッシュボタンもうまくカービングされ、ケースに違和感なくマッチしています。

軟鉄製文字盤の加工は困難ですが、マットな質感を残しながらも印字は艶を帯びており、かつはっきりしています。スモールセコンドの仕上げも見事なものです。
Cal.89631特有の表示形式のお陰で、クロノグラフ表示も極めてすっきりしており、まさにRef.866の生まれ変わりと言えましょう。

サファイアクリスタル風防は、ボックス型でベゼルから大きく立ち上がっています。

とりわけ高く評価したいのは、6時位位置のスモールセコンド針がインヂュニアの稲妻マークとなっている点です。これにはすっかり痺れてしまいました。

裏蓋はしっかりと閉じており、無用なスケルトンバックでは無いため質実剛健な印象で極めて好感が持てます。

デフォルトのカーブストラップはややカジュアルすぎるので、本来のインヂュニアよろしくアリゲーターストラップに交換しても気品溢れて良いでしょう。

Ref.3809には色違いとして125本限定のAMGモデルもあります。文字盤が極めてごちゃごちゃしていますが、スケルトンの裏蓋からはなんと軟鉄製インナーケースのみが見えるという非常にマニアックな仕様です。
いずれにせよ、不遇な時代の良作インヂュニアです。
先入観で選り好みせず、ぜひ手に取っていただきたいと考えます。
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