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伊福部昭 リトミカ・オスティナータをたたえる

カーチュン・ウォン 日フィル就任記念コンサート

ベートーヴェン4、大傑作のブラームス2、劇的なシューマン、どのピアノ協奏曲も、素晴らしいのですが…

やはり伊福部昭の「ピアノと管弦楽のためのリトミカ・オスティナータ」が至高です。カーチュン・ウォン指揮日本フィル(ピアノは務川慧悟)で2022年5月27,28日の両日サントリーホールの最前列で聴きました。もともと後半のマーラー4がメインだったのですが、2日とも前半のリトミカで失神、あまりの聴覚体験に席から立てなかったのを覚えています。

執拗に繰り返すリズム、入り乱れる5拍子7拍子、こんなにすごいピアノ協奏曲は他に知りません。伊福部作品の頂点に君臨する、永遠のmasterpieceです。

当然、怪獣大戦争マーチやゴジラの音楽が見え隠れしていると言えましょう。名著「管弦楽法」の著者として知られる伊福部の見事なオーケストレーションが爆発しています。実は私も学生時代「管弦楽法」を読んだことがあります。ほとんど理解できませんでした…。

リトミカの第2稿はほとんどゴジラの音楽そのものと言えましょう。日本音楽史の頂点に輝くレガシーであり、しばらく伊福部、武満、黛ら邦人作品の研究に専念したいと思います。

またゴジラvsメカゴジラも、リトミカ・オスティナータそのものです。伊福部作品がいかに偉大で、タイムレスなものであるかが再認識されるでしょう。

『リトミカ・オスティナータとは、執拗に反復される律動という意です。作者が嘗て中国に遊んだ時、小さな仏像が四方の壁全面に嵌め込まれている堂を見て、その異様な迫力に深い感動を覚えたことがあります。そのことが、この作品の構成のヒントとなっています。一方、吾が国の伝統音楽の律動は2と4等の偶数で出来ていますが、不思議なことに韻文では5と7が基礎となっています。この作品ではこの韻文のもつ奇数律動を主体としました。又、旋法としては伝統音階に近い六音音階(ヘクサトニック)を用いましたが、これ等三つの要素の統合によって、アジア的な生命力の喚起を試みたものです。これ等異なったふたつの要素の結合を、執拗に反復することに依って吾々の内にある集合無意識の顕現を意図しました。敢えて、このような厳しい制限を与えたのは、レオナルド・ダ・ヴィンチの「力は制限に依って生まれ、自由に依って滅ぶ」と云う言葉への憧れが心底にあったからに他なりません』(伊福部昭)

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