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ウィーン国立歌劇場2025年日本公演「ばらの騎士」をたたえる

ウィーン国立歌劇場2025年日本公演
「ばらの騎士」

作曲:リヒャルト・シュトラウス
台本:フーゴー・フォン・ホフマンスタール

指揮:フィリップ・ジョルダン
演出:オットー・シェンク
装置:ルドルフ・ハインリッヒ
衣裳:エルニ・クニーペルト
合唱指揮:マーティン・シェベスタ

陸軍元帥ヴェルテンベルク侯爵夫人:カミラ・ニールンド
オックス男爵:ピーター・ローズ
オクタヴィアン:サマンサ・ハンキー
ファーニナル:アドリアン・エレート
ゾフィー:カタリナ・コンラディ
マリアンネ:レギーネ・ハングラー
ヴァルザッキ:トーマス・エベンシュタイン
アンニーナ:ステファニー・メイトランド

響官:ヴォルフガング・バンクル
ファーニナル家の家令:アンドリュー・ターナー
公証人:マークス・ペルツ
歌手:エンジェル・ロメロ
帽子売り:イレアナ・トンカ
居酒屋の亭主:ヨルグ・シュナイダー
侯爵家の家令:ユーライ・クハール

ウィーン国立歌劇場管弦楽団
ウィーン国立歌劇場舞台上オーケストラ

ピアノ/チェレスタ:アントン・ツィークラー
ウィーン国立歌劇場合唱団
ウィーン国立歌劇場助演

バンダ指揮:マルクス・ヘン
演出補:ピーター・パッヘルプロンプター:イエラ・ペトリチェック

児童合唱:NHK 東京児童合団
モハメド(小姓):東京バレエ学校生徒

2025年10月26日は東京文化会館でジョルダン指揮ウィーン国立歌劇場のリヒャルト・シュトラウス「ばらの騎士」を観ました。会場は満席、外に「チケット求む」のプラカードを持った人が立ち、ロビーにはドレスアップした観客が溢れる中、幕が上がりました。

1994年の日本公演では同じ指揮台でクライバーがばらの騎士を振り、本当に見事なものであったと語り継がれています。

1994年の録音は公式には存在していませんが、一部聴くことができます。本当に見事な音楽です。(https://youtu.be/jeCrzn34kJI?si=8rDd13CbFirrrDNc)

国内においては、この31年前の公演の記憶が亡霊のように浮遊しており、すべての「ばらの騎士」の公演がクライバーと比較されてしまう宿命を背負っています。

本公演は、そのような呪縛から本作を解き放つものであったと思います。ジョルダンの指揮は見事なもので、ウィーンフィルの繊細かつ豊かな音を自在に操っていました。妻と私は5階の天井桟敷で聴いていましたが、オーケストラピットの音がダイレクトに飛んでくるので、本当に充実した聴覚体験でした。

シェンクの演出は極めて豪華なもので、ゼッフィレッリのそれと共通するように極めて原典に忠実かつ写実的なもので美の極致と言えましょう。

ばらの騎士はゲッツェル指揮新国立劇場(この時は指揮姿がクライバーに似ていると話題になりました)、阪哲朗指揮びわ湖ホールの公演を聴いており5回目の実演になりますが、いつも第3幕の三重唱では感極まってしまいます。元帥夫人はマイスタージンガーのザックスのような心境もあったのでは無いでしょうか。

指環の本邦初演を成し遂げた神奈川県民会館は閉館し、びわ湖ホールと東京文化会館も改装のため長期クローズに入ります。これから数年間、オペラ公演は非常に厳しい環境を強いられるでしょう。

本邦が貧困国となりつつある中、このような大規模な引越しオペラを観れる機会は今後少なくなるでしょう。そのような歴史の転換点において、まさに本邦オペラ上演史の頂点と言っても過言では無い歴史的な公演でした。

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