ローマ歌劇場の来日公演を観ました。
9月17日には神奈川県民ホールでゼッフィレッリ演出プッチーニ「トスカ」、18日には東京文化会館でソフィア・コッポラ演出ヴェルディ「椿姫」という日程です。
本当に素晴らしい公演でした。
4月の新国立劇場アイーダに続き、ゼッフィレッリの演出を観ることができ感慨深いものがあります。おかしな読み替え演出が跋扈する近年のオペラ界隈において、ゼッフィレッリの演出は化石のような存在となってしまったのかもしれません。それでも、本当に秀逸なプロダクションだと思います。
メトのトゥーランドットなどもいつか観たいです。
ローマ市内をそのまま持ってきたかのような(トスカは教会、ファルネーゼ宮殿及びサンタンジェロ城と実在の場所が舞台のため他にいじりようが無いのですが…)、極めて写実的な舞台装置であり、第1幕終わりのテ・デウムの場面などは大人数による極めて荘厳なものでした(新国立劇場のトスカは、この場面でナポリ皇妃マリア・カロリーネが黙役で登場するなど、ゼッフィレッリに負けないくらい凝ったものになっていましたね)。
マリオッティの指揮はかなりテンポを揺らして煽)るもので、ドラマティックなトスカによく合っていました。タイトルロールのヨンチェヴァはもちろん、ブルデンコ演じるスカルピアも上品な歌唱で秀逸でした。
有名なカヴァラドッシの「Vittoria!」
グリゴーロはものすごい伸ばすので、びっくりしました。情熱的なカヴァラドッシで好演でした。
ちなみに、世界初演者であるデ・マルキのカヴァラドッシは、1903年のメトでの公演が蝋管録音(メイプルソン・シリンダー:メトの職員がプロンプターボックスで隠し録りしたもの)に残されています。聴きづらい録音ですが、大変興味深いです。
今回の来日公演では、トスカの世界初演で用いられた鐘が登場しました。演奏史オタクの私としてはまさに感無量でした。遠い極東の地にいる我々でも、このようにしてトスカ世界初演との緩やかな同時代性を獲得することができるのです。
椿姫はやや落ち着いた演奏でしたが、コッポラの演出は心象表現に重きを置いたオーソドックスな演出で安心して観ることができました。アルフレード役のメーリは2021年1月の新国立劇場トスカでカヴァラドッシを歌っていたので、久しぶりの再会となりました。
私のオペラ体験の大部分は敬愛してやまない初台の新国立劇場によるものであり、今回の引っ越しオペラの興行元は新国立劇場批判の急先鋒として知られたNBSです。下記の記事(かなり昔の記事ですが…)ともあわせて、コロナ禍以降の困難な状況下においては引っ越しオペラの存続が可能なのか、疑問に感じていたのも事実です。
しかしながら、ここまで見事な舞台を観ると、引っ越しオペラの存在意義を再認識せざるを得ません。来年は英国ロイヤル・オペラハウス(マーラーも指揮台に立ったコヴェントガーデン!)来日公演でリゴレットとトゥーランドットをやるので、非常に楽しみです。
トスカ
指揮:ミケーレ・マリオッティ
演出・美術:フランコ・ゼッフィレッリ
合唱監督:チーロ・ヴィスコ
衣裳:アンナ・ビアジョッティ
照明:マルコ・フィリベック
再演演出:マルコ・ガンディーニ
舞台美術補:カルロ・チェントラヴィーニャ
トスカ:ソニア・ヨンチェヴァ
カヴァラドッシ:ヴィットリオ・グリゴーロ
スカルピア男爵:ロマン・ブルデンコ
堂守:ドメニコ・コライアンニ
アンジェロッティ:ルチアーノ・レオーニ
スポレッタ:サヴェリオ・フィオーレ
シャルローネ:リオ・ポール・シャロット
看守:ファビオ・ティナッリ
牧童:高瀬 久遠
ローマ歌劇場管弦楽団、ローマ歌劇場合唱団
NHK東京児童合唱団
椿姫
指揮:ミケーレ・マリオッティ
演出:ソフィア・コッポラ
合唱監督:チーロ・ヴィスコ
美術:ネイサン・クロウリー
衣裳:ヴァレンティノ・ガラヴァーニ
マリア・グラツィア・キウリ
ピエルパオロ・ピッチョーリ
振付:ステファヌ・ファヴォラン
照明:ヴィニーチョ・ケーリ
照明補:ヤコポ・パンターニ
ビデオ:ロレンツォ・ブルーノ
イゴール・レンツェッティ
ヴィオレッタ:リセット・オロペサ
フローラ:エカテリネ・ブアチゼ
アルフレード:フランチェスコ・メーリ
ジェルモン:アマルトゥブシン・エンクバート
アンニーナ:マリアム・スレイマン
ドゥフォール男爵:ロベルト・アックールソ
ドビニー侯爵:マッティア・ロッシ
グランヴィル医師:アンドリー・ガンチェク
ガストン子爵 :エドゥアルド・ニアーヴェ
受託人:ダニエレ・マッシミ
フローラの召使い:マウリツィオ・カッシャネッリ
ローマ歌劇場管弦楽団、ローマ歌劇場合唱団、ローマ歌劇場バレエ団
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